「この手の震えはパーキンソン病なのかな」
「体が動かしづらい気がする」
その症状はパーキンソン病の初期症状である可能性があります。
パーキンソン病は、脳の神経細胞が壊れてしまい、体がうまく連動できなくなる病気です。この病気は手足の震えや体のこわばりなどの症状がよく見られ、ゆっくりと時間をかけて進行していきます。
この記事ではパーキンソン病について以下のお話をしていきます。
- パーキンソン病の主な症状
- 初期~進行期の病気の特徴
- 治療法から日常での注意点
少しでも気になる方はこの後紹介するポイントを確認してみてくださいね。
パーキンソン病の主な運動症状

パーキンソン病には手が震える、思うように体が動かせないなどの代表的な運動症状が5つあります。
ゆっくりしているときに震える
パーキンソン病の初期症状として、安静時に見られる手の震えがあります。
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」によると、この手の震えはパーキンソン病の方の75%に現れている、比較的よくある症状です。【2】
よく見られる症状は「ピル・ローリング振戦」と呼ばれ、手の親指と人差し指で丸薬をコロコロ動かすような動きで、1秒間に4〜6回程の速さで起こります。【2】
この震えは、手指だけでなく、上肢全体や、下肢、下あごなどにも広がることがあります。また、筆記や箸を持つなど、何か作業しているときには、震えが一時的に治まっていることが多いのが特徴です。
体が動かせない、ゆっくりになる
パーキンソン病では動作のはじめが出にくかったり、動作が遅くなることも特徴の1つです。
初期の症状は文字を書くときにうまく書けない、小さくなってしまうなど、細かい上肢の動きの不器用さが現れます。しだいに、着替える、歩行など大きな動作への動かしにくさが出現していき日常生活に影響を及ぼします。【2】
体のこわばりがあり動きにくい
筋肉の本来持っている緊張が高まり、固くなり体のこわばりが出現します。患者さんに力を抜いてもらった状態で他者が関節を動かしたとき、持続的な抵抗が見られるのが特徴です。
自分ではあまり感じませんが、上肢の肘関節、手関節、下肢の股関節、膝関節などに抵抗が現れます。
体のバランスがとりづらい
体のバランスを保つのが難しくなる「姿勢保持障害」は、パーキンソン病が進行してから現れることが多い症状です。【2】
発症から数年経って現れ、初期に見られることはほとんどありません。この症状が出ると、少し押されただけでも転びやすくなるため、転倒には注意が必要です。
また、立ったり歩いたりする際に、腰や背中が丸まり、前かがみになる特徴的な姿勢になります。
歩きにくい
パーキンソン病は歩行時さまざまな障害が出現します。
- 歩く時の歩幅が狭くなる小刻み歩行
- 引きずるように歩くすり足歩行
- 初めの一歩がでないすくみ足
- 歩き出すと止まらなくなる加速歩行
これらの症状は転倒の原因となるので注意が必要です。
パーキンソン病の非運動症状

パーキンソン病には運動症状以外にも、睡眠面や精神面での非運動症状にも影響を受けることがあります。
| 非運動症状 | 特徴 |
|---|---|
| 睡眠に関する症状 | ・日中眠たい ・夜間眠れない ・足がムズムズして眠れない ・睡眠時夢の中の行動を実際にしてしまう |
| 精神認知に関する症状 | ・気分が落ち込む ・幻覚・妄想がある ・認知機能が低下する |
| 自律神経に関する症状 | ・よだれが多い ・尿が出にくい頻尿がある ・便秘など消化管不調がある ・起立時血圧が低下する |
| 感覚に関する症状 | ・匂いを感じにくい ・原因不明の痛みがある |
非運動症状は運動症状が発症する前から、症状として現れるものもあります。
パーキンソン病の症状の経過

パーキンソン病は、病気が進行するにつれて、新たな症状が現れる病気です。
初期の症状から進行期の症状までそれぞれ説明します。
| 発症時期 | 主な症状 |
|---|---|
| 運動症状を発症する10年前 | ・気分が落ち込む ・匂いを感じにくい ・便秘など消化管不調がある ・睡眠時夢の中の行動を実際にしてしまう |
| 運動症状を発症してからの10年間 | ・安静時に手が震える ・持続的な筋肉の抵抗がある ・動作が出にくい、ゆっくりになる |
| 運動症状を発症して10年以降 | ・認知機能が低下する ・妄想幻覚の症状が出る ・姿勢や歩行障害が現れる ・頻尿がある ・不随意運動(ジスキネジア)がある |
パーキンソン病の治療

治療の中心は薬物療法です。また、場合によっては手術療法をおこなうこともあります。
パーキンソン病の治療は病気を完治させることではなく、患者さんに現れている症状に合わせて治療をすることが基本です。患者さんの日常生活動作や、生活の質を上げることを目標にします。
気になる症状があるときや、体調が優れないときは、お近くの脳神経内科を受診しましょう。
薬物療法
パーキンソン病の治療では、L-ドパやドパミンアゴニストといった薬を主に使います。これらは、病気によって不足する脳内のドーパミンを補うことで、運動症状の改善を目指すものです。
病気の初期、特に発症から5年ほどは「ハネムーン期」と呼ばれ、薬の効果がよく現れ、比較的長く安定した状態を保つことができると言われています。【3】
しかし、パーキンソン病が進行すると薬の効き方が不安定になります。以下2点が代表的な症状です。
- ウェアリング・オフ:薬が効きにくくなり、次の薬までに症状が悪化する
- ジスキネジア:多く服用することで、体が意思とは関係なくクネクネと動く
このような進行期の症状に合わせて、医師は薬の種類や量を細かく調整し、より安定した状態を保てるように治療を進めます。
手術療法
内服治療だけでは、症状の改善が難しい場合、脳深部刺激療法と呼ばれる治療を行います。
脳の深部を電気で刺激する治療法で、電極を埋め込む手術が必要です。
実際に治療に臨む方は一部ですが、症状の改善が期待できます。
パーキンソン病の日常における注意点

パーキンソン病ではどんな点を日常生活で気をつけていけば良いのでしょうか。2つ説明します。
転倒を予防する
パーキンソン病の場合、動きのバランスが悪くなったり、動きが小さくゆっくりなることで、体を動かすことが億劫になりがちです。そのため、筋肉量や体力が落ち、転倒リスクが高まります。自宅や外で簡単にできるものを取り入れましょう。
- ウォーキングを行う 20分
- ストレッチを行う 10分
医師や理学療法士の指示に沿って、出来るだけ大幅で腕を大きく振って歩きます。
また、サンダルは転びやすくなるため避け、滑り止めのついた履物を選びましょ
食事や水分を適切に摂取する
栄養の偏りなく、バランスよい食事に気をつけましょう。
炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなど必要な栄養素をまんべんなく摂るのが理想的です。【3】
特に、便秘はパーキンソン病の方が悩みがちな症状の一つです。食物繊維の食材を積極的に取り入れ、水分も多めに摂り、便秘を予防しましょう。
また、脱水症状を起こすと、薬の作用にも悪影響を及ぼしたり、自律神経のバランスを崩すきっかけになったりするため注意が必要です。
FAQ:パーキンソン病に関するよくある質問
パーキンソン病の経過で気になる点、よくある質問について3点まとめました。
Q.パーキンソン病になる前触れって何かありますか?
A.パーキンソン病の前触れには10年くらい前から次のような症状が現れる可能性があります。
- 便秘になる
- 匂いを感じない
- 睡眠中に大声を出す
- 気分が落ち込む
少しでも症状に心配がある場合は、医療機関へ相談してみると安心です。【3】
Q.パーキンソン病の方の平均寿命はどのくらいですか?
A.治療の発達により、パーキンソン病だけが原因で寿命が縮まることはほとんどないと考えられています。
しかし、パーキンソン病の症状によって、飲み込みがうまくできずに誤嚥して肺炎になったり、便秘になって腸閉塞をおこしたりすることもあるため、注意が必要です。【3】【4】
Q.パーキンソン病が進むとどうなりますか?
A.パーキンソン病が進むと、やがて姿勢や歩行に障害が出始めたり、認知機能が低下したりして、日常生活に影響する恐れがあります。
しかしこの症状の進行は人それぞれです。
リハビリテーションやかかりつけの診察を受けて、現在の身体の機能を維持していくことが大切です。【3】
パーキンソン病の症状を和らげるためには受診が大切!
パーキンソン病は運動面や認知面、精神面にも影響を及ぼすことがあります。
しかし、薬物療法で症状を和らげることが期待できます。症状の出かたも患者さんそれぞれで、進行の仕方も違うため、気になる点があればお近くの脳神経内科を受診し、相談してみてください。症状を知って、対処できると安心した生活を送れるようになるでしょう。
参考文献
【1】厚生労働省 6 パーキンソン病
https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001173440.pdf
【2】パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html
【3】パーキンソン病の療養の手引き
https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/parkinson.pdf
【4】パーキンソン病指定難病
https://www.nanbyou.or.jp/entry/169

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